スタジオくら20周年記念演劇祭
07年8月から11月にかけて、飯能市にある「スタジオくら」の開場20周年記念演劇祭が行われました。
「スタジオくら」は文字通り、お米屋さんの店舗兼倉庫を改築し、スタジオとして活用しているものです。
3間×4間の小さなスペースですが、照明、音響機材がわりと充実していて、地元の劇団やバンドなどに
利用されていています。
使用料金も低く抑えられ、飯能の人口の割りに演劇愛好者が多いのは、この小さなスペースが大きな役割を果たしているからに違いありません。
このスタジオくらが、スタジオとして生まれ変わって20年が経ちました。
私が役者として舞台を踏んだのは、ここが最初です。
思い入れが深い場所です。
この演劇祭に、当然私も参加しました。
07年11月、劇団ランデブー参加作品 「朱鷺の戯れ」「一人語り・かあさんの下駄」
その公演時の当日パンフレットの内容をリライトしてみました。
その1「スタジオくら」
今回、私はスタジオくら開場20周年記念演劇祭の11月の公演、劇団ランデブーによる
「朱鷺の戯れ」に参加することになったが、私自身、久しぶりの地元飯能での舞台だ。
芝居を通じて多くの良い出会いがあったが、やはり私の芝居への想いは、
この「スタジオくら」を抜きにして語れない。
私が芝居をする上で、ここはその原点だ。
この小さな空間が無かったら、多くの演劇を愛する人々に、人生の豊かさというものを
提供することはなかったろう。
このスタジオくらの舞台は、その板を踏んだアマチュア、プロを問わず、こう思わせる。
「良い空間だ」 「面白い空間だ」 「魅力がある空間だ」
そう、この「スタジオくら」という不思議な場所は20年の歴史を持つ。
それはこの「スタジオくら」の舞台を踏んだ一人一人が、ここを訪れた人全てが
この歴史を作り上げてきたのだ。
これからもその歴史は積み重ねられていく。私の想いと一緒に・・・
その2「かあさんの下駄」
これは、中村ブンさんという、俳優であり、シンガーソングライターのかたの歌だ。
二十数年前のバブル経済期真っ只中の時にレコードが出たのだが、
その当時は売れなかったそうだ。
私がこの「かあさんの下駄」という歌を初めて聞いたのは、今から13,4年前になる。
カーラジオを聞きながら車を運転していると、この中村ブンさんが出演されていた。
当時、ブンさんは「風の中の天使たち」という本を出版されていて、それが巷で話題になっていた
ある少年野球チームのコーチと子供たちとブンさんの交流を描き、
読むものに素直に感動を与える素晴らしい本だった。
その中でこの「かあさんの下駄」と言う曲が紹介されていて、
それを聞いているうち、私は車の運転が出来なくなった。
涙が溢れてきて、前が見えなくなってしまったのだ。
歌を聞いて泣いたなんてことは初めての経験だった。心が揺さぶられた。
それからすぐにこの本を買い求めた。
CDも探した。しかし、すでに販売は打ち切られていた。
その後、インターネットを検索するとブンさんのホームページを見つけた。
そこからブンさんと私の交流が始まった。
「かあさんの下駄を朗読したいんですが、やってもいいですか?
地元の小学六年生に卒業前に聞かせてやりたいんです」
「え? 私の歌を朗読?」
ブンさんは、自身の歌を朗読と言う手法を使って表現する、と言い出した人間に
初めて出会ったのだろう。その事に興味を示し、快諾してくれた。
(著作権というものがあるし、使われ方がイヤかも、と思った)
そこから毎年、卒業式前の六年生にこれを朗読している。
まだ12年ほどしか人生を送っていない彼らに、これを聞く事によって、
何かを思い出して欲しかったのだ・・・。
そうこうしている内、私の中にブンさんを飯能にお呼びしたい、という想いが強くなっていった。
それを実現するため、あちこちに打診した。
その甲斐あって、昨年と今年の二回、青少年健全育成会と公民館の主催で
中村ブンコンサートが開かれた。
そのコンサートは暖かい雰囲気に包まれ、時には笑い、時には涙を誘い、素晴らしい時間を過ごさせてくれた。本当に充実し、うれしい日だった。
さて、今回の公演は、前触れも無く二本立てになっているが、一本目は私の朗読(のような)
「かあさんの下駄」である。
最近、「昭和」という時代が懐かしく扱われ、映画やドラマでその時代背景が多用されているが、この「かあさんの下駄」も昭和30年代後半の、ブンさんが小学生のときの思い出のひとコマを歌にしたものだ。
時代は「かあさんの下駄」という作品にとって追い風になってきている。
実は、今月の21日に「かあさんの下駄」のCDが新規に発売される。
ジャケットはブンさんと交流が深かった石ノ森章太郎氏(漫画家)によるものだ。
ぜひとも今回ご来場の皆様にはお買い求めいただきたいと願っている。
私の朗読がそのキッカケになってくれれば幸いだ。
実はこの時、中村ブンさんにも招待券を送ってありました。
残念?ながら、当日は地方にコンサートがあって、来飯はかないませんでしたが、
11月発売のCDの宣伝チラシを100枚ほど郵送していただきました。
この一人語り・かあさんの下駄の反響は大きく、アンケートには
「涙がこぼれました」とか「CDも買ってみたいと思います」等、うれしいことが多く書かれていました。
「かあさんの下駄」の大ヒットを祈念しつつ、
私のスタジオくら開場20周年記念演劇祭の参加も終了しました。